【イントロダクション】
東大生のみなさんにとって気になることの一つは、やはり「将来設計」があるだろう。
将来の選択肢として、みなさんは何を考えているだろうか。
有名企業への就職?スタートアップ立ち上げ?世界一周旅行?
そうしたことの中に、一つ、「博士進学」を考える人もいるかもしれない。
だが、「博士進学」のイメージを具体的に持っている人や、そこに向けて努力を重ねている人に多く出会えている人というのは、なかなかに少ないのではないかと思う。
そこで、つい最近「博士進学」を志したY.I.さんに、話を聞いてみた。
【インタビュー内容】
・ なぜ博士に行くことを決めたのでしょうか。
自分の将来設計が徐々に明確になり、その将来設計を叶えるためには博士号相当の専門性が必要だと考えるようになったからです。私は将来的に、今の研究分野(宇宙関連)で何かしらの起業をしたいと考えています。というのも、現在日本にはこの研究分野を扱うような企業がほとんど存在せず、もしその分野を突き詰めていきたいのであれば、自分で起業するのが一番手っ取り早いのではないかと思っているからです。
おそらく多くの人が博士進学に抱いている金銭的に不利なイメージに加え、元々研究に向いている性格ではないと感じていたことから、博士という選択を取るまでには大きな葛藤がありました。そのため、博士進学の決断に至るまでに、修士卒で企業に就職した人、博士課程の学生、博士号取得後に企業に就職した人、そのままアカデミアに残った人など、様々な進路を選択された先輩方のお話を聞かせていただきました。そして私の話も聞いていただきました。そのような先輩方との対話や自分自身との対話を通して、今の研究分野を突き詰めて自分で事業を起こす、という将来像を描いている時が一番ワクワクしていることに気づきました。
そうして「今の研究分野で起業する」ということが私の中の最優先事項となり、その達成に必要な手段として博士進学を決断しました。
・ たくさん悩んだと思いますが、何が決め手になったのでしょうか?
最後の決め手となったのは、現在宇宙ビジネスに関わる方に私の将来設計を話した際に、とても面白そうだと言っていただき、博士進学が最も良い選択ではないかと助言を受けたことです。その方とお話しした当時、私は将来的に起業したいという気持ちは固まっていましたが、博士進学ではなく、修士卒で就職し、社会経験を積んでから起業するのも一つの選択肢と考えていました。しかし、実際に宇宙ビジネスに関わる方から、「この分野を突き詰めるには博士号が有利であり、博士号を持つ人も多い」という現実を教えていただきました。
現在成長段階であり、変化の大きい宇宙ビジネスを近くで見ている方からこのような助言を受けたことで、自分の将来設計を実現するためには博士進学が必要な手段であると確信することができ、博士進学を決断する決め手となりました。
・ その決断をしたのは、いつ頃のことだったのでしょうか。修士に行くことを決めた段階で博士進学を決めていたり...?
いえ、大学院入試時点(B4の夏)は修士卒業後に絶対に就職すると思ってました。
ただ、大学院入試の志望理由書の中に修士進学の動機や希望する将来像を書く欄があり、その欄を思うように書き進めることができず、なぜ修士課程に進むのか、将来何がしたいのだろうか、ということをぼんやり考え始めるようになりました。なので卒論が終わったB4の2月頃、就活を始めるために先輩方からアドバイスをもらいつつ、本当に企業に就職することが自分にとって最良の選択なのかと悩むようになりました。一人で悩むことに限界を感じ、色んな人にこれまでぼんやりと考えてきた将来設計を踏まえて相談するようになり、その中で博士進学という選択肢が浮かび上がってきました。
初めて博士進学の選択肢を提示された時は、その可能性を微塵も考えていなかったので、かなり動揺しました。そして上述の通り様々な進路を選ばれた先輩方の話を伺いつつ、1、2ヶ月ほど迷いまくりました。
考えがまとまったのがM1の4月ごろで、その時に博士進学への決心に近いものを感じたかなと思います。
・ 少し視点を変えて。日本において「博士号を取る」ということには、主に金銭的メリットの薄さから躊躇う人も多いと思います、その辺りは何か考えましたか?
それは考えたし、もちろん博士進学を決断する上でのネックでした。今も不安が無くなったと言われると嘘になります。修士課程の今でさえ周りが就職してお金を稼いでいることに羨ましさを感じることがある中で、これがあと最低5年続くと思うと、時折恐ろしくなったりもします。
ただ、学振(日本学術振興会の特別研究員)などの奨学金が取れれば学生中に食いっぱぐれることはないし、最低限の生活は保証されていると知りました。それならば、お金よりも自分のやりたいことを優先したいというのが私の結論でした。
あと、将来的にやりたいことがうまくいかなかったとしてもPhDを持ってればどこかの企業は拾ってくれるだろう、という楽観的な考えをしています(笑)
・ 素敵な捉え方だと思います(笑)
ちなみに博士については様々奨学金がありますが、何をいつ準備をしましたか?
修士中の奨学金として東京大学の卓越大学院に応募しました。私が受けたものは4月中に書類提出やその後の面接があったので、4月に入ってから準備を始めました。現在はそれに採用してもらえることが決まっていて、経済支援を受けられるかは今秋決まります。
あとは博士課程の間は学振に応募する予定です。これはM2の春に準備する感じになると思います。
・ そうなんですね。着々と進めていて、素晴らしいです。
次に、『博士取得後に一般企業に就職する場合どのようなメリットがあるのか?』について、もしお考えや先輩方からいただいたお話等あれば、ぜひ教えてください。
今はまだ博士取得後の就職について深く考えていないため、詳しいことはわからないのですが...企業にもよるとは思いますが、専門性を活かせるようなところであれば、博士号をもっていたほうが待遇がいい、という話は聞いたことがあります。
またメリットの話とはずれてしまいますが、博士取得後の就職について、私の場合は、一度一般企業に就職してビジネススキルを身につけ、その後に起業に至るという選択肢も良いのではないかと考えています。博士進学の懸念点の一つとして、社会経験が積めない、特に起業したいのであればビジネスのスキルが身につかない、ということがあると思います。その点で、一度一般企業に就職するのはアリだなと思っています。
・ 確かに...余談ですが私も、その指針はありだなと思ってここ最近の日々を過ごしています(笑)
それでは最後に、博士に進学する意気込みなどあれば、ぜひお聞かせください。
自分の将来設計を達成できるよう、修士課程や博士課程に関わらず、とにかく今から足掻きまくっていこうと思っています!
・ 応援しています!!今日はありがとうございました。
B4の夏時点では博士進学を全く考えていなかったと言うYさん。その一方で自身のやりたいことに向き合い、それの達成が「最優先事項」として博士進学を決断したと語る姿が、本当にかっこよかった。
この記事を読んでくださっている東大生のみなさんが全て、そうした夢や目標を持っているとは思わない。それでもこうした先輩の存在が、みなさんの視野を、選択肢を、広げてくれるのだろう。
「就職して働いて、(いっぱい)お金作るぞ」以外にも多様な世界が広がっていることに目を向けてくださることを、心から願っている。
【プロフィール】
Y.Iさん
2020年 東京大学理科一類入学
2022年 東京大学工学部システム創成学科進学
2024年 東京大学工学系研究科システム創成学専攻入学
